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消費者に共感され、行動を促す広告とは
ニールセンデジタル アナリスト コヴァリョヴァ・ソフィヤ
2019年10月に弊社が発表した「消費者のマルチスクリーンの利用状況」では消費者が信頼するメディアとして、オンライン上の口コミ、ブランドのウェブサイトなどデジタルメディア全般が向上していることについてレポートしました。消費者のマルチスクリーンでのコンテンツ消費が加速し、消費者自身がコンテンツの消費やブランドとの関わり方をコントロールするようになった今、ターゲットとなる人にリーチし、共感、行動を促すための広告キャンペーンを組み立てていく作業は、益々困難になってきているのではないでしょうか。消費者の記憶に残り、態度変容を促すためにも、まずは消費者が日々接触する広告に対してどのように共感しているのかを理解することが重要になってきています。そこで今回は、コンテンツ消費において傾向の異なるデジタルネイティブの20代以下と昨今スマートフォンの普及が拡大しているデジタルネイティブではない50代以上に着目し、各世代がどのようなメディア・情報ソースに信頼をおいているのか、そして広告の本来の目的である態度変容を促すヒントについて見ていきたいと思います。
■どの世代でもデジタルの情報信頼度が向上している
まずそれぞれの世代でどのような情報、広告が信頼されているのかについて見ていきます。信頼度の高い上位5つの情報ソースを見ると最も信頼されるのは両世代ともに「知人からの勧め」で、20代以下では58%、50代以上では50%という結果になっていました。2年前と比較すると、最も信頼度が上がっていたのは両世代で「オンラインに投稿された消費者の意見」と「ブランドのWebサイト」となっており、デジタル上の情報の重要度が増していることが分かります。両世代が信頼している情報、広告は共通しているものが多く、今やデジタル上の情報はインターネットの普及とともに育った若い世代だけでなく、上の世代でも信頼が深まっています。今後50代以上の世代においても、デジタルはターゲットにリーチする重要な情報ソースになっていくことが期待されます。一方で、世代間で信頼される情報、広告には差も見られました。各世代の上位5つのうち、異なっていたものを見ると20代以下では「製品の使い方などを紹介した動画」が4位にランクインしていたのに対し、50代以上では「新聞記事などの論説」といった従来型メディアが2位となっていました。 (図表1)
■若い世代では信頼するメディアであるほど態度変容を起こしやすい
では、信頼度が高ければ必ず商品の認知や購入意向など、態度変容につながるのでしょうか。広告による態度変容への影響は世代間で異なることが分かりました。 図表2は実際に各世代が商品やサービスを利用/購入/ダウンロードするきっかけとなった情報、広告上位5つを表しています。20代以下では信頼する情報と利用/購入につながる情報に違いは見られず、信頼する情報・広告であるほど、それをきっかけに商品の利用や購入につながっていることが分かります。特にオンライン、オフライン問わず口コミは最も購入に繋がりやすく、22%がそれらの情報をきっかけに利用や購入をしたことがあると回答しています。一方50代以上では、必ずしも信頼する広告が購入につながっているわけではありません。信頼度では上位だった「オンラインに投稿された消費者の意見」と「新聞記事などの論説」の代わりに「製品の使い方を紹介した動画」や「メールマガジン」が購入に繋がりやすく、10%がそれらの情報をきっかけに利用や購入をしたことがあると回答していました。若い世代では信頼度によって購入が促されるのに対し、上の世代ではこのような信頼度が他と比べて低い広告形態でも製品・サービスにアクセスしやすいことから、消費者の即時的なアクションが期待出来ます。広告主としては消費者にどのような行動を促したいかによって、提供する情報を変えていく必要があるでしょう。
また、どのメディア形態でも若い世代の方が広告をきっかけに態度変容を起こしやすいことが分かります。両世代で最も購入につながっている「知人からの勧め」に注目すると20代以下では22%がそれらの情報をきっかけに利用や購入したことがあるのに対し、50代以上では12%にとどまっていました。
■「憧れ」をテーマにしたものや「有名人が推薦」する広告は若い世代に共感されやすい
最後に各世代でどのような内容の広告が共感を得やすいのかについて見ていきます。各世代で最も共感されるテーマを見ると、「実生活の場面に基づくもの」と「価値を重視したもの」など両世代で共感を得やすい広告がある一方で、健康や憧れ、有名人が推薦しているものなど年代によって受け入れ方が異なる広告があることが分かります。若い世代では、特に有名人の推薦といった要素を取り入れた広告は共感されやすく、「有名人が宣伝、推奨しているもの」は若年層では5位にランクインしていますが、50代以上では10位に留まっています。 (図表3)
■若い世代では特にスクリーンを跨いだ総合コミュニケーションプランが重要
広告キャンペーンを成功させるには、ターゲットとなる消費者にリーチし、メッセージに対する好意的な反応を獲得し、そして意図した行動を引き起こさせる必要があります。今回の分析では信頼されるメディアだけではなく、行動を促すメディア、更に共感が得られやすいテーマなども世代間で異なっていることが分かりました。若い世代では「憧れ」、高齢層では「健康」など、各世代に身近なテーマを採用することで広告が記憶に残り、態度変容への影響が高まることが期待できます。
デジタルの情報源はどの世代でも信頼度が増していますが、若年層では特に、信頼度が高いメディアであるほど消費者のアクションに繋がりやすいため、若い世代の態度変容を考える上で今後デジタルの重要性は更に増してくるでしょう。また、テレビ広告など従来型メディアへの依存度は高齢層と比べて低いとはいえ、これら広告媒体に対する信頼や行動を喚起される度合いは依然として高いままです。スクリーンを跨いだ総合コミュニケーションプランは特に若い世代へリーチ、好意的な反応を獲得するために重要になります。昨年はデジタル広告費がテレビとほぼ同等にまで伸長し、今後更にデジタル広告投資が増加することが予想されていますが、広告主は自社ターゲットがどのようなメディアを信頼し、どのような情報接触によって態度変容するのかなどを把握した上でメディアプランを立てていくことで、広告効果の拡大が期待できるでしょう。